誰にも役立つ身の回り
化学専門書
(繊維・化学品・油脂)

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羊毛
 

ラノリンとは

【はじめに】
ラノリンというものは、羊毛に付着しているグリース状の脂質成分を精製したものである。古代ギリシャやローマ、エジプトにおいて、この脂質成分が人の肌に優しく、化粧料や医薬品として利用されていたと言われている。羊毛と分泌した脂で身体を守る羊は、厳しい環境下で生活をしてきている。従って、羊毛脂はあらゆる機能性、特殊成分、性質を持っているので、広く産業界に珍重されている。産業的には、大きなものではないが、その物理作用には目を見張るものがあり、更なる用途開拓が期待されている。
【性質】
● 抱水力(約300%)がある
● 高分子量(約800)であるが、融点が低い(37〜43℃)
● 物体表面へ粘着する力が強い
● 乾燥性が少なく、可塑性を持続する
. ● ワックス類の結晶防止作用がある
● 空気や酸化に対して強い抵抗性がある
● 樹脂のブロッキングを防止
● 皮膚・繊維・皮革へ浸透、柔軟化作用
【化粧品原料としての特徴】
. □ 顔料分散性に優れる
□ 界面張力低下能が高い
□ 自己乳化性がある
□ 皮膚に浸透する
□ 皮脂成分と類似構造である
□ 水分の蒸散を正常にする
□ 皮膚の軟化作用がある
【化粧品原料としての欠点】
□ においがある
□ ベトツキが強い
□ ラノリンアレルギー体質者に反応が強い
【性状】
外 観 淡黄色
酸 価 1以下
けん化価 90−110
ヨウ素価 18−36
融点(℃) 37−43
【用途分野】
●化粧品・医薬品
●金属工業
●塗料・インク工業
●ゴム・プラスチィック
●繊維工業
●農業用剤
●接着剤
●ガムテープ・絶縁テープ
●紙加工
●コンクリート
●文具
【化粧品・医薬品界での現況】
約25年前までは、ラノリンは化粧品のあらゆる製品に使用され、テレビ・雑誌・宣伝紙あらゆるところで素晴らしい原料として紹介され、実際効果を出し、消費者から喜ばれて商品が使用されていた。 海外では、全成分表示が始まっていたが、日本では当時汎用の高い原料の中で、アレルギー・強い刺激が報告されていた原料の98品目を「指定成分」としてラベルに表示義務を法制化された。その中に多くのラノリン及びその誘導体が収載された。 化粧品メーカーの多くは、「指定成分」を表示して販売すると消費者離れが起きると考えそれらを使用しなくなった。機能性が欠けても他の原料に変えていった。 海外から化粧品界も関税障壁問題として名指しされ、強く全成分表示を要求され、一昨年4月から全成分表示の義務化が始まった。 しかし、化粧品メーカーは、「指定成分」を意識し、ラノリン始め有用な原料は蚊帳の外と言った状況に思われる。又、この様な状況下が継続しているので、ラノリンその物を知らないのが現状であると思われる。 2003年1月5日のTV番組で羊年にちなんで“メガテン”でラノリンが紹介されたが、その内容の一部ですら殆どの化粧品会社の研究員等は知らないと思われる。 医薬品では、ラノリンは皮膚への密着・浸透性、薬剤の溶解性・除放性等から欠かせない原料であるが、薬を使用して逆にかぶれ等がひどくなる恐れから、皮膚科医からの指導で配合されなくなっている。ラノリンの様な優れたドラグキャリーアーとなるものは合成からは未だ得られていない。
【ラノリンアレルギー】
ラノリンが特異体質の人に陽性を示すことは、古く1930年頃から報告されている。
しかし、その頻度は、健常者では、10万人に5人と低く、刺激感受性の強い患者に対しても1048人に対し12人の陽性反応を示したに過ぎない。
【化粧品対策】
しかし、現実には、消費者が使用前に自分の体質・体調を知り、これらを認識した上で、ラノリン配合クリーム類を有効に使用する必要がある。このためにも消費者の啓蒙・必要な情報提供が充分なされていれば、ラノリンは、化粧品原料としてすばらしい機能を発揮する。
【動物・環境問題】
ラノリンは、羊毛から採られているので、動物を虐待しているのではないかと、誤解されている人もある様だが、これは誤解であることは明白である。即ち、羊毛は春先になると毛が刈取られ、洗毛した廃液を回収して精製されている。羊は元気を取り戻している。 BSE問題とも関連付けられるケースもあるが、羊のスクレイピーは200年以上も前から知られているが、直接ヒトに感染するという報告はない。又、羊毛の安全性はガイドライン等で最も安全な“スクレイピー感染性が検出されていない組織”のカテゴリーIVとして定義されている。その羊毛から付着した脂を回収したウールグリースを精製したラノリンは安全である。更に、ラノリンの原料は、BSEフリー国から得たものである。 ラノリンは、万一クレイスピーに汚染されていたとしても精製工程で不活性化されており安全である。 上述以外にラノリンは、廃液から回収され環境問題にも寄与し、リサイクル原料として活躍している。(クローダジャパン(株)資料より)
【注】
当文章は、過去の経験と【ラノリン物語】宮川高明編著・余田英二共著を基に作成したものである。
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